プロフィール
名門の屋号を継ぐ者としての役割を果たしたい【グットニュース】中込厚
インタビュアー【野中香良】――先生は初代グットニュースの高瀬五郎先生の娘婿で、「夢追人」の義弟にあたるとか。高瀬一族からは、「ビッグバン」「うまたか」のお二人も本場場立ち予想士だった時代も。その中で五郎先生の看板である屋号「グットニュース」を引き継がれました。
グットニュース【中込厚】……自ら進んで「グットニュース」の屋号を残したい、引き継ぎたいと思い志願しました。義理の兄貴や義弟が予想士だったり、予想を生業しているんだから刺激だらけだよね。元々、学生の頃から競馬に興味はあったし、周囲にこれでもかというほど予想士がいるんだから(笑)、自分もこの仕事を目指すしかないなと。それが25歳前後の頃かな。弟子入りした際や独立して屋号を引き継いだ当初は「五郎先生んとこのお婿さん」という感じだったかもしれないけど、今は何とかねって感じですかね。
――名門の屋号を引き継ぐプレッシャーというものはありませんでしたか。
……さすがに独立してから15年以上も経ちますからね。ただ、この世界に入った際に、たかだか30センチほどの台の高さが、えらく大きく見えたこともありました。師匠の、お客さんが儲かる予想を目指しなさいという教えは気にしています。別に穴だけにこだわっているわけじゃないんだけど、競馬は常に答えのない問題を解いている状況といっていいはず。かっこつけるわけじゃないけど戦いの日々ですよね。そうすると、当たったレースというよりも悔しかったレースを思い出します。
――予想士さんの的中、不的中でお客さんは一喜一憂しますからね。
……我々、予想士の仕事はお客さんに儲けさせること。そのために納得のいく予想を提供できているか、結果がちゃんとついているかというのは誰もが気にしているでしょう。もちろん、そのふたつが完璧にできて穴馬券を提供できるのならそれでいい。
また、プレッシャーではないんだけど、お客さんから求められていることも先代の頃とは変ったことは痛感しますよね。なんといっても馬券の種類が増えました。予想を提供している側からいうと、馬連や馬単でも「狙って当てる馬券」は配当に関わらず価値があると自負しているところもあるんです。だけど、今は3連複や3連単での的中も求められている。ただ、3連複や3連単の3着馬などはかなりのレースで、勝負が終わった後にたまたま突っ込んだとか、他の馬が差し切れずに残ってしまったとか、予想の本質とかけ離れたところで決まることも多いでしょう。穴馬券を仕留めるのが上手だねとお客さんに褒められるのは嬉しいんだけど、配当に関わらずきっちりと読み切っての予想じゃないと、当たったからといって納得できないんですよね。台を継いだプレッシャーというよりも、自分が納得できる予想を打てているかというプレッシャーの方が今は強いかな。
――そこまで自分を追い込まれて予想されているんですね
……お客さんは自分が競馬場へ行った日は儲けたい。常連さんとて毎日競馬場に来られる人は限られていますからね。となると、予想士は常にレベルの高い的中が求められているでしょう。予想の価値というと大げさかもしれないけど当て方そのものに対する拘りはありますよね。
また、予想を立てている時間だけではなく、場立ちをしている時間もありますからね。現在は大井・川崎競馬で場立ちをしています。浦和、船橋も予想して自分のサイトなどで提供しているので時間との戦いだよね。物理的には時間に追い込まれているという感じでしょうか(苦笑)。
――どの予想士さんに聞いても時間との戦いだというお話が多いです。
……そうだと思いますよ。馬柱をチェックして、VTRと付け合わせて下調べしておくだけでも数時間は簡単に掛かります。馬の状態がどうだったとか、脚元(蹄鉄など)に変化がなかったかとか、馬場状態はどうだったとか総合的に調べるだけでもね。作業量は相当なもの。頭の中では当然、馬券的な妙味もあるかということも検討するし納得のいく予想を打つまでのプロセスは、ファンの皆さんが思っている以上だと思いますよ。しかも、すぐに目の前でレースが終わる。常に試験を受けさせられている状況といえるでしょう。当然、予習だけではなく復習も疎かにしてはいけません。
さらに、こちらが納得のいく予想を打っても、騎手がヘグってしまうこともある訳だし。前日まではインが持っていたのに、天気が変わっていなくても急に外差しということもありますからね。思ったよりも馬券が売れてしまっていて、儲けにくいなということも。後は完全に読み違っていたレースは何が悪かったのかという反省とか、ちょっと気が付くことだけを思い出してみてもキリがありません (苦笑)。
――名前が可愛いだとかで買われた馬券が当たって、予想士さんの予想がハズレることも……。競馬って理不尽だなと思わせられることも少なくないのでは?
……たまたま、同僚や仲間内に誘われて競馬場にきた女性ファンとかがビギナーズラックに恵まれることはあるでしょう。ちょっとでも競馬を好きになってくれるんだったら、どんなアプローチでも馬券は当たった方が楽しいと思うから、それ自体にどうのこうのいうつもりも意見もありません。
ただ、それでは当て続けたり儲けたりすることは絶対にできない。そこが予想士との違いですよね。何度も指摘するけど、「狙って当てられる」とういのが予想士の役割だし仕事。逆説的にいうと自分の予想を突き詰めてブラッシュアップしなければならないってことでもありますけどね。
――ラッキーパンチはなかなか続かないですしね。
……だから、お客さんにアドバイスするとすれば、私も実践しているんだけど「狙っている馬の見極め」から始めてみるといいかな。競馬は一にも二にも能力が重要。例えば、ある馬に注目してどのクラスまで勝ち上がるとか、展開がハマれば浮上するというようにカテゴライズして狙い馬を考えてみるといいでしょう。注目馬が出走してきた際に、買っていいのか(買う価値があるのか)、それとも買っちゃいけないのかという見極めができるようになってくると、飛躍的に予想力は伸びると思いますよ。もちろん、馬券を儲かるタイミングで買える訓練にもなると思います。
競馬って、絶対に印象に残っている馬っていると思うんですよ。重賞を勝つようなオープン馬だけではなく、自分が競馬場に来るとよく走っているなとか、惜しくもハズレたなとか。
――中込先生のように予想士さんになれなくても近付けるような努力を少しするだけで馬券は上手になるんでしょうね。いやー、でもやっぱり面倒なので、先生の予想に乗った方が早いですかね~~。
……あー、楽しいかどうかはともかくとしてそれもひとつの手かもしれませんね(笑)。そういった重圧に応えられるように予想を打っているつもりです。予想に乗るかどうかは別にして、気軽に「あの馬はどうですか」とか「この馬を狙おうと思っているんですけど」というように聞いてもらえれば、見解を述べることはすぐに対応できます。常連さんばかりで近付きにくいかもしれないですが(笑)、是非とも気軽に利用して欲しいと思いますよ。
――10年務めた助手時代にさまざまなことを学んだという中込。助手時代は自分の意見を持たずに徹底的に師匠の教えを学んだという。現在、活躍している予想士の中でも下積みはそれなりに経験しているといっていい予想士だ。今は誰もが中込厚の「グットニュース」と認識していることだろう。氏の拘り抜いた予想に是非とも触れて欲しい。
インタビュアー【野中香良氏】――主に競馬を専門とするライター。大手生産牧場の戦略意図が分かれば必然的に馬券は当たりまくる! (競馬王馬券攻略本シリーズ) 、馬券しくじり先生の超穴授業 (競馬ベスト新書) 等の著者でもある。